温泉旅行というくらいなので、旅のメインディッシュは言うまでもなく温泉宿。
宿選びはかなり難航しましたが、ちょっと奮発して1泊ひとり3万程度のぎりぎりハイクラス?の宿を選択。
今回選んだお宿はこちら↓
選んだ条件
- 宿自体がそれほど大きくない
- 部屋に露天風呂がついている
- 寝具がベッド
- 食事が椅子で取れる
以下宿泊先を大解剖。
これから検討されてる方には参考になるかもしれませんが、だいぶ長くなりますのでお好きなところだけご覧くださいまし。
箱根強羅温泉 月の泉
全容
ケーブルカー「中強羅」駅から徒歩5分弱。この駅は完全無人駅。
ケーブルカー自体がものすごい傾斜のため、駅近くの道もすべて傾斜はエグイくらいの角度。
宿へ向かう道は横に平坦だが、そこから宿までの下り坂は健康なわたしでもちょっと怖いくらい。
ま、普通は車で来るよね。当日もおそらく電車経由で来たのうちひと組だけだったっぽい。
外観はなかなかおしゃれ。シンプルでいい。
建物は2階建て。決して大きくはない。
もともと規模の小さい宿を探していた。ここは全9室、なにかの保養所だったところをリニューアルして使っている様子。
実際近隣には大企業の保養所がわんさとあるので、そのうちのひとつだったんだろう。
エントランスはこんな感じ。まさに森の中の宿という風情、繁る緑にシンプルな建造物のコントラストは個人的にはなかなか好み。
なかに入るとホテル然としたフロントがあり、名前を告げるとすぐに担当の客室係によって部屋まで案内される。
いちおうロビーというかラウンジに該当する場所はあったが、基本的には客室直行型なので使われる機会もあんまりないんだろうね。
新聞雑誌も用意があったけど、いかんせん場所的にもスペース的にも長時間滞在には向かない。飾り物に近い。
部屋とお風呂
和室・和洋室・洋室と3種類あるとのことで、和洋室を選択。
ベッドとソファが必要だったのでそうなったのだが、和室はけっきょくほとんど使わなかったから洋室でもよかったなー。
ソファになぜかクッションが6個もあった。見た目はいいけど、それほどいいソファではなかったな。
テーブル散らかしててすまん。
ベッドはこちら。
足側になんて呼んだらいいのかわからんがブラインド?シェード?カーテンがあり、寝るときに気になる場合はそれをおろすことができる。
余計なものはなにも置かない、シンプルさにこだわってる感じが伝わる。
全然使わなかった和室。
それでも温泉に来て畳がないのは個人的に寂しい気持ちだったので、まあよかったのかなー。
障子を全開放するとテラスとも洋室ともつながるのでとても広く感じる。
実際広い。
洋室より少し小さい程度のテレビがついていて、障子を開くと向かい合せにテレビが設置されているのが不思議な感じだった。
テラス。温泉っぽい履物が用意されていてそれを履いて出る。この写真で言うと手前側に露天風呂がある。
露天風呂。想像していたよりずっと広い。3人くらい入ってもまだまだ余裕がある。
写真右手に扉で仕切られた室内型の洗い場があり、洗面所がある。
洗面所(兼脱衣所)は少し狭い印象だったが、室内だからそれはしょうがないね。
洗い場はじゅうぶんなスペース。シャワーがちゃんと室内で浴びられる設計になっているのはありがたい。
写真右手前が部屋の窓で、もちろんそこからの出入りも可能。
お風呂自体は最高のひとことに尽きる。
欲を言えば、年寄りのために手すりは欲しかったな。見た目損なわれるから木とかでカモフラージュしてさ。
さすがにないとちょっと怖い。全体的にバリアフリーさを感じる部分はまったくなかった。客層ターゲットに入れてないってことなんだろうな。
言うまでもなく露天に虫はつきもの、宿命。こればっかりはしょうがない。
夜間に相当やってくるので朝には風呂にけっこう虫が浮いてます。
そういう意味では冬場の方がいいのかも。
部屋の前には森が広がり眼下には小川が。
案外と密度はスカスカで、そのぶん明るいというメリットと、生活道路から丸見えというデメリットが混在。
目隠し用シェードは用意されているが、閉めてしまうと景観が損なわれる。今回は1階客室だったので、2階だったらもうちょっとマシなのかも。
生活道路とは言っても使用頻度は低いようで気になるほど人は通っていなかったけど、もう少し目隠し要素のあるものがあるとありがたい。
マイナスイオン(古いな)効果は抜群。
室内にはうれしいコーヒーマシンのセットが。
ただ、これ使い方書いてない。かなり探したけど書いてない。
どうにか使うことはできたけど、母だけだったらあきらめてたな。こういうところも年寄りにやさしくない。
箱も豪華でこれはなんかうれしい。
お茶菓子として置いてあったのは「ごぼうの木の実」。
これはすごくおいしかったし、宿オリジナル感が嬉しかった。
室内で着るものは浴衣かパジャマが選べる。
浴衣は3種類のデザインから。どれもかわいい。後に出てくる母が着ている青っぽいのと、わたしが選んだピンク、あとは白っぽいのだったかな。
これは外国人とかはちょっと嬉しいかもね。ちなみに外国のお客様は圧倒的にピンクを選ぶそうな。
パジャマはラクではあるだろうけどカワイイものではなかった。
食事は浴衣でもパジャマでもOK。
写真はないがほかに地下に内風呂と呼ぶものもある。
大浴場と言うほどでかくはないけど、おそらく保養所時代はそこがメインの風呂だったのだろうと思わせる。当時は露天もそこについていた様子。
現在は内風呂のみで、外には出られないようになっている。
普通に気持ちよかった。
建物全体の印象としては
「掃除は行き届いているけど、メンテナンスは行き届いていない」。
穴の開いたままの網戸だったり、水漏れのしてる雨樋だったり、日頃の手入れでは手が回らないところはほっといてる感じがした。
居抜きに近いリフォームだったのかもしれないな。
不快なほどではないけど、もうちょっと頑張れるかなー。
夕食
客室とはべつに食事専用の個室が用意されていて、そこへ出向いて行って食事を摂るスタイル。
ちゃんと完全個室で、いちいち担当が運んできてくれる。
部屋自体は広くもなく狭くもなく。ここも無駄なものはいっさい置かないスタイルで、一貫したシンプルさには好感が持てる。
前菜が設えられた状態でお呼びがかかった。
本日のお品書き。なんだか披露宴のメニューみたいだ。
食前酒はマスカットだったかなー。母の分までいただいた。ほどよく甘くて美味。
順番に見ていこう。
左から姫さざえ、もろこし真丈、アスパラ揚げ、品書きになかったナンダカの押し鮨。
どれもていねいに作ってあった。
アスパラはサクサクだし、もろこし真丈は手間かかってる。
上から 時計回りにモロヘイヤ、梅蜜煮、カマス一夜干。
グリーンピース豆腐、これは非常においしかった!
まったりとした舌触り、上には雲丹が乗っている。
続いて椀物。これは絶品。
鯛とそうめん、小メロンに柚子。
なにげに一連のメニューの中でこれに入ってた鯛がいちばんおいしかった。
上品でちょうどいい塩加減。柚子の香りも効きすぎず、体にも心にも優しいひと椀。
お造り、季節の鮮魚。まぐろといかと…はまちだったかな?忘れた。
刺身としてはまあ普通。それよりこれは器の良さに感激。
この宿「月の泉」をデザインしたオリジナルだそうな。山の大文字焼と月の形、下には泉。
こういうのはたまらなくいいね。テンションあがる。
焼き物は鮎。蓼酢を添えて。
シーズンど真ん中もあり、塩加減もこれ以上ない完璧さ。この鮎うまかったー。
食べにくいし食べるところも少ないしで好きな魚ではないんだけど、たまに食べると感激するレベルで旨い。春の清流の味がする。
煮物は茄子、いんげん、人参とコリンキーという謎の食材。かぼちゃの一種のようだね。
牛肉も入ってたようだけど気が付かなかったレベル。普通においしかった。
凌ぎは鱧。
すべての料理が及第点のなか、これだけは残念だったなー。
鱧の小骨が気になりすぎ。
鱧はそういうものだって言いたいところだけど、過去によそ数軒で食べた鱧はもうちょっとマシな処理がされていた、のと比較すると、ちょっと調理がよくないと言わざるを得ない。
無理して使う食材じゃない。これはほんと、残念だった。
梅のジュレはおいしかったけどね。
ようやくメイン、というタイミングで食事と止め椀、香の物までまとめて持ってきてもらった。
この手の食事ってたいていいつも最後におかずなしで白米だけ食う羽目になって、育ちの悪いわたしなんかはオカズナイナーって思うからさ。
石焼の肉野菜はうまかったけど、欲を言えば肉はもうちょっと量ほしかったなー。
3切れだと、わたしにゃものたりない。
ごはんはお櫃で出してくれるため、全部食わなきゃと謎の使命感のおかげでものすっご腹いっぱいに。
止め椀はなんぞの海藻入りでおいしかった。
デザートは葛切、桃アイスと季節の果物はぶどう、すいか、マンゴー。
これはどれも手放しで絶賛。
果物はうまいのは当然として、桃アイスが見事だった。
完全に桃。まんま桃。でもちゃんとシャーベット。
夕食は鱧をのぞけばかなりの満足度。
抜群にいい食材を使ってます!って感じではなく、むしろいい料理人をかかえて丁寧に丁寧に作ってる感じが伝わってきた。
後述するが接客レベルはそう高くないため、商品知識に乏しいのが多少残念な点ではある。当たり外れがあると言ったところか。
それでもうちの夕食を担当してくれたコは、当たりの部類だったと思う。
朝食
事前調査の段階で朝食はずいぶん評判が良かったので期待していたが、正直ちょっぴり期待外れだった。
夕食が期待以上の出来だったので、相殺トントンってところかな。
いわゆる普通の朝食。オレンジジュースとお茶が最初に用意されてるのはよかった。
サラダは青じそドレッシングで。カボチャのペーストはうまかった。
小松菜の和え物。良く言えば家庭的な味。
香の物は普通。
卵焼きは甘め。かまぼこはたぶん鈴廣さん。明太子は普通。上にあしらわれているものはなんだかわからずじまい。朝食を担当してくれたコはまったく商品知識がなかった。
朝食もメニュー一覧あればいいのに。
めかぶかな?明太子のせ。ひきわり納豆ときんぴら。どれも朝食鉄板メニューだね。
朝食で一番うまかったのは湯葉。これは文句なしにうまかった。
煮物もなんだかわからないが普通。全体的に塩気がかなり控えめ。夕食の絶妙さと比べると物足りなさは否めない。
干物は夜のうちに4種くらいから好きなものを選べる。
わたしは金目を。
母は鯵を。鯵の方が少し良かったが、どちらもだいぶ塩分控えめで正直それほどおいしくなかった。
この味噌汁が焼いた石を投入してグツグツさせる「石焼味噌汁」になるそうで、事前のクチコミなどでイベント性が評価されていてちょっと楽しみにしていたのだが、石焼にするのは冬場だけなんだって。ちょっと残念。
普通に鍋で提供される普通の豚汁でした。
デザートは各種果物の入ったヨーグルト。これはおいしかった。
夕食に比べるとちょっとランクが落ちた印象の朝食でした。
まあ朝だしね。
これは担当者の当たり外れもあるかもだけど、夜ほどの商品知識は与えられていない感じ。
ひょっとしたら、朝食事はメインの料理人が不在なのかも?と思えた。
総評
接客に関してはお世辞にも高得点はあげられない。
というのも、若い連中を安い値段で使って、そこで経費を詰める運営をしている感じがしたので。
実際夜を担当してくれたコは「派遣です」と語っていた。なるほどね。
事前に調べていた時点でそこはある程度覚悟していたし、そこで経費を詰める思考も悪くはないと思うが、守備範囲を限定すれば若く未熟なスタッフでももうちょっとマシになると思える。
そこはまだまだ頑張れるところだな。
全9室というキャパで儲けを出すためには削るところはシビアに削って、金をかけるべきところに惜しみなくかけるコンセプトでは非常に同意できるというか、わたしがもし温泉宿を作るならこういう感じになるだろうなー、って意味ではすごく好感は持てた。
各種アメニティは安めに、人件費も可能な限り詰めて、そのかわり料理人は一流を手放さないように確保して、風呂で思い切り贅沢を。
ただひとつ残念だったのは、全9室というキャパでありながら支配人やら女将やらの挨拶がついに一度もなかったこと。
それだけ小規模でやるなら、責任者に当たる人からの挨拶がいちどくらいあってしかるべきなんじゃないか。
そこで「若く未熟なスタッフががんばっておもてなしをさせていただきます」みたいな断りがあれば、その後の印象もずいぶん変わると思うんだが。
それとも昭和の思考なのかね、こういうの?
5点満点で採点するなら
建物・設備 3.4点
部屋 4.4点
風呂(部屋露天) 4.8点
風呂(内風呂) 3.2点
接客 3.1点
夕食 4.2点
朝食 3.6点
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総合 3.8点
きびしめな点数だけど、あくまで1泊3万円の料金に対する満足度。
これが2万3千円くらいだったら、0.3点くらいずつアップする、かな。
まだまだがんばれるポイントは多いし、何よりお風呂はほんとうによかったので、機会があれば再訪がないとは言わない。
結局、行き届いていなかったアレコレを満たす宿に泊まりたければもうちょっと金出せってことなんだろうね。
次はさらにもうワンランク上の宿に泊まりたい願望ができました。
とはいえ、じゅうぶんに当初の目的は満たされたよい旅よい宿でありました。
母も満足してくれたしね。
ありがとう!
箱根旅行あれこれは各記事をご覧ください