うん、いや、カツカレーのほうじゃなく、文字起こしのほうね。
カツカレーはまだ元気に行ってます。
これの話。
大嫌いな(この時点でいろいろダメだが)デスクワークの研修を進めていたんだが、なかなかの難易度で。
いいタイミングではむぺむがゴツめな仕事をたんまり振ってきたりで、手持ちのタスクが盛りだくさんで脳内見事に散らかってしまい、ずっとアワアワしていた。べつにラジオスターではない。わかる人だけわかってくれ。
作業自体は新鮮なせいもあってかそれなりに楽しかったんだが、諸々わたしの性質的にも生活パターンにも合わない部分は多く。
まず、受注した作業は12時間以内納品という縛り。コレにかなり泣かされた。
5分の音声を起こすのに要す時間は初心者のわたしだと短くても1時間半、知らない単語だらけだったり聞き取りにくい話し手だったりすれば3~4時間かかってた。
空いた時間で手を付けてもそこに別の用事が舞い込んでくると中断せざるを得ず、そのまま半日作業できないことなんてザラ。普通に作業していても集中力が続かないこともあり、受注タイミングが非常に難しかった。
ちなみに研修中は1分35円とかなので、収入としては推して知るべしだね。
それから、毎月報酬を申請せねばならないというハードル。
これ地味にツラい。はじめのうちは子供の小遣いみたいな額だから、それに取られる時間と手間がさらにめんどくさく感じる。
いやもう、仮に作業に慣れて行っても絶対申請忘れるわ。どこから申請してないかわかんないレベルで忘れるわ。
そして、文字起こし自体の難しさも実に実に痛感した。
どう言ったらいいのかな、聞き取れないというより、普段の会話をどういうふうに聞いて理解しているかってのがものすごく現れちゃうって言うか。
それを文字として起こすのが意外なほど苦痛で。
どういうことかというと、たとえば。
わたしがあなたに、わたしの働いてる店のカレーを紹介するとしようか。
「えー、どうも、はじめまして、じゃないですかね、え、ま、普段こう、文章読んでいただいてるんで、うん、はじめましてではないですね、たるたると申します、はい、よろしくお願いし、いたします、はい。
えーとですね、今日は、え、わたしの勤めてるお店の、え、カレーをご紹介しようかと。
うん、なんかね、わりと有名みたいなんですよ、なんか、テレビとかでも紹介されてますし。
牛スジをね、えと、なんだ、煮て、煮込んで、すごい長い時間煮込んで、それがこう、ものすごくおいしいんですよ。
カツもね、言わ、言わずもがな、市場ですからね、ええ、いい肉使ってますよ、厚くて、それをこう、ええ、じゅわって感じで、はい、揚げてね。
アツアツでサクサクなんですよ、はい。
えとですね、ジャンボって名前ついてますけど、ま、あれです、女性でもいけますよ。
はい、うん、文句なしで、ええ、一番人気ですね、はい。
ま、近くに来る機会がですね、もし、ありましたら、はい、是非、あ、お立ち寄りいただければ、はい、ぜひ食べ、召し上がっていただき、いただければ。」
文字起こしの世界にケバ取りって言葉があるんだが(それもこの数カ月で初めて知ったが)、わたしが研修してたところではこのケバ(あ、え、はい、まあ、等)や言い淀み、言い間違いなども全部起こす方針だった。
上記の文章を意味だけ取れば3行で済むよね。
「お勤め先のカツカレーはテレビで紹介されるほど大人気。
牛スジをじっくり煮込んだカレーと、新鮮肉厚なサクジュワカツが絶品。
美味なので女性でもジャンボをぺろりといけちゃう、お近くにお越しの節はぜひ!」
なんかね、やっていくうちに言い淀みや言い間違いもそもそも何が言いたかったのかとか、言葉の意味が、発してる人の意図と正しく一致してるのかどうか、やればやるほどわかんなくなってきちゃって。
普段の会話の中でどれだけ相手の言葉を意訳して解釈しているのかと、いろんな意味で恐ろしくなってきた。
これはたぶん、そういうの深く考えてやるべき仕事じゃないんだろうな。
ただ聞いたまま起こす、ってのが正解なんだが、それがこれほど難しいとは。
研修が進めば進むほど惑うことも増え、時間もかかるようになっていった。
研修行程が半分くらい過ぎたあたりで、これはもうモノにはならないなと完全に理解した。
もちろん努力すればできるようにはなるだろうが、以前の時の言語感覚を破壊される感じに近い状態に結構すぐなっちゃうだろうな。
こんな感じ
なんなら日頃の人との会話にも影響が出てしまいそうだ。それがいいことにしても悪いことにしても。
それでも、丁寧に研修をしてくれていたので、途中でドロップアウトはせず、最終査定までの所定の作業は終わらせた。
で、結果基準に満たずリリースと相成ったわけだ。
4月いっぱいで契約満了、早く言やクビになったわけだが、正直ホッとしてる。
冷静に考えて、突発的にはむぺむから仕事や雑事が入ってくる可能性のある現在のわたしの環境で、二足の草鞋は物理的にかなりキツイ。
なんもない時期はなんもないからそれを基準に「週に10時間くらいなら上乗せしても」なんて思ってたけど、いや全然無理だわ。
基本生活パターンとしてもはむぺむの暮らしに合わせてるから時間もぐちゃぐちゃだし、空いてる時間に睡眠やら休息を取るわけで、固定拘束時間と別に自主的に作業時間を捻出するのは、わたしみたいなダメ人間には至難。
内職系はダメだと、改めて再確認できたよ。
だいぶ情けねえ結論だが。
そしてカツカレーは早や1年と2カ月が経過した。
相変わらず楽しいし、相変わらず転職欲求も強くあって。
辞めちゃうのがもったいないから辞めれないけど、ほかの仕事もやってみたいしなあ。
なんて話を店のボス(最前線は退いているがまだボス。だいぶ仲良くしてもらってる)にしたら(こんな話をする時点でアレだよな)
ボス「じゃあ、よそで仕事して違うなって思ったら、また戻ってくればいいじゃん」
私「ボス相手だったらそうするけど、代替わりしちゃったらそれは無理だよね」
ふたりして大笑いしてました。
このボスが大好きなので、まだもうちょっといる…かな、たぶん。
予定は未定、未来は白紙、明日のことなんてわかりません!
↑45歳の台詞じゃねえな
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