もう読み終わってからだいぶ経つんだけど書こう書こうと思ってるうちに今に至ってしまった。
本屋大賞かなんか取ったんだっけ?だいぶ話題になっていたので一度は読みたかった。
三浦しをんの「舟を編む」。
おもしろかった。想像以上にライトめな読感で、すらっとさくっと読めた。
以下ざっくり感想。ネタバレ含むかもなので未読の方はご注意を。
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辞書作りに情熱をかける男たちのお話。
辞書を作るという限りなく地味で果てしない作業にスポットを当て、魅力的なキャラクターで話をじょうずに引っ張って行ってくれる。
もっと文学クサイものを想像していたのだけど、全然ライト。軽快で楽しく勢いに乗って読める。
キャラの立ち過ぎ感は否めないが、文体とはぴったりくるので違和感はない。
作り上げようと何年も何十年も取っ組み合う辞書の名前は「大辞林」や「広辞苑」のような「大渡海」。
なるほどだから「舟を編む」。
そして主人公はクソ真面目な馬締。
もうこの設定だけでご飯3杯イケるわっていうね。技あり一本。
んでまあ、これを読んでいる間「辞書を作る」ことについてずいぶん考えていて。
本文中にも幾度となく出てくるんだけど、簡単な言葉ほど説明するのが難しい。
定番のやつだと「右」をどうやって説明する?
「左」の反対?お箸を持つ方?北に向かって東側?南に向かって西側?
どれが正解とかではなく、伝えようとする側が「読む側がどう思うか」を常に想像しながら作り上げていくのって、ほんとに途方に暮れるくらい大変だなーと。
最高に面白い仕事だけど、最高に大変だ。
いまでも好きな漫画「暴れん坊本屋さん」の番外編「番線」で、辞書作りに触れている話が出てきて。
すごくざっくりだけど、「舟を編む」で描かれていたリアルな話が読める。
この人のエッセイコミック、クセは強いけど個人的に大好き。
落語の「やかん」って噺で、言われた単語にことごとくいちいちインチキな説明を添えるご隠居さんが出てくるんだけどさ。
ちょうど「舟を編む」を読み終わった頃にこの噺を聞いて、なんだかしみじみ言葉の面白さを実感した。
ああ、近い理屈で言うとクロスワードパズルとかもそういう感じ。
自分の持ってる「言葉のイメージ」は必ずしも他人が持ってるそれとは一致しない、ってことと、それを擦り合わせる作業がどれほど大変か、ってこと。
ともあれ、読書は楽しいな。