もはやそれ自体がどの程度の威力があるのかもアヤシイイベントではあるが、誰にでも門戸が開かれている、そしてその道を志すためでもあり諦めるためでもあるというコンセプトによってつくられたらしい、お笑いが好きな人にとっては年末の風物詩、それがM-1グランプリ。
敗者復活を含めた全10組で争われた1stステージと、勝ち上がり3組による決勝。
和牛とジャルジャルの勝ち上がりは妥当だと思えたが、霜降り明星は完全にダークホースだった。
正直1回戦時の出来としては「力のある若手、これからすごい伸びそう、だけどこのネタは若干かかり気味っていうか盛り込み過ぎ?」みたいな印象だったんだが、想像以上の高得点がついて決勝進出を果たした。
1回戦でネタとして面白かったのはジャルジャル。こう言ったらなんだけどくっだらねえのに音で楽しめる。リズムネタに近いものがあった。
スーパーマラドーナのサイコネタとかまいたちの安定感もさすがと言ったところ。
だが抜群に印象に残ったのはトム・ブラウン。なんかこうヘンな空気感がちょっとクセになる。2本目の一二三さんが土の下から出てくるってネタめちゃくちゃ見たかった。
まあ売れるかどうかはまた別のお話だが…
あとゆにばーすのはらさんは使い方次第でものすっご面白くなる気はした。
女性芸人はどうしてもみんな露骨に笑いを取りに行くメイクや振る舞いが主流になっちゃってるけど、そっち系はそろそろ食傷気味。
もっと別の切り口で行っていいと思う。
2年連続準優勝、実力折り紙つきの大本命和牛は2本ともすさまじいほどのクオリティのネタを揃えてきた。
優勝できなかったけど、もう普通に優勝したコンビより間違いなく実力あるよ。
漫才を越えた何かになりつつあるよ。練られ過ぎ。
見る方の好き嫌いが分かれちゃうよな、個人的には好きだけど。
2本目のオレオレ詐欺ネタで、「救急車呼んだ!」「あのすみませんもう大丈夫なんで」「それ実は電話繋がってへんねん」のくだり、笑い半分悲鳴半分だったもんね。
わたしもゾワっとした。
ちょっとしたスルリとサスペンダー(あえて説明しないのであえてツッコまないように)、騙し合いの小噺見たみたいな気持ちになった。あの短時間で展開されるネタとしては異常な完成度。
で、優勝した霜降り明星は、2本目は納得の面白さだった。
というより、見る方(わたし)が少し慣れたって部分もあるのかも。
いわゆる漫才らしいそれなのでスピード感がすごくて、1本目はそれについていけてなかったのかしれない。
でも、ツッコミの滑舌の良さに終始助けられたっていうかそのおかげで話についていけてた感じ。
ただ正直、ネタとしては完成度も高いし漫才は非の打ちどころがないくらい面白いけど、小さい方の人がいまひとつ好感度が低い。
なにが悪いって明確に言葉にできるわけじゃないんだけど、しいていうなら若いなりの思い上がりが態度に出ている感じ。
それを凌駕するほどの面白さがあればキャラとして立って、そこからさらに伸びるのだろうけど、現時点ではそこまでの魅力を彼単体には感じられない。
コンビとして今後売れて行けるかどうかは微妙な印象を受けた。
なにやら審査員たちもクソマジメっていうか堅苦しい審査をしてて、コメントはそれぞれまさにプロのそれで、視点がそれぞれに異なっていて面白かった。
ああ、そういうところを考えてネタを作ってるんだなーって。
番組作ってるほうの意図としては今後、なんかこう、お笑い大会の甲子園としてやっていきたい、のかな?って感じ。
今回は比較的若手が獲ったわけだが、たとえばこの先ものすごくおもしろい超若手が出てきてグランプリ獲ったとしても、その後どういう感じでテレビやら芸能の世界でやっていけるかってのは疑問符が残る。
どこの世界もおんなじでいろんな年功序列やら力のある人らの人間関係やら癒着やらがまったく影響しないとは言いがたい。
完全なる実力至上主義ってわけにゃなかなかいかないのが現状だ。
ひっそりと潰れていく才能にあふれた若手もたぶんたくさんいるんだろう。
我慢して我慢して正統派のモノを守り続けて栄冠を掴むベテランの姿を見るのも悪くはないけど、そうして上り詰めたところで、そもそも才能が足りていなければ輝きを持続することは難しい。
せっかく表舞台でちやほやされてのしあがったのに枯渇してしまった姿を見る方がよほど胸が痛い。
向き不向き、適材適所でおさまれば世もすべてこともなしでいいんだろうけど、なかなかそうもいきません。
ともあれ今大会で活躍したそれぞれのコンビが、輝きを増せる仕事に今後ありつけることを切に祈り。
敗退したすべてのコンビのまた来年のさらなるネタにおおいに期待します。
でももう和牛は出場者としては出ないでいいよ!
番組で特別名誉枠みたいなの作ってあげて。同じレベルで競わせるの、和牛もほかのコンビもかわいそうだもん。
昨日の1回戦、霜降り明星が「残り4人で霜降り和牛で出ましょって話してました」みたいな話を出てくるときにしてたって言ってて。
それ聞いたせいかもう完全に脳内変換が霜降り和牛になってます。
今日もこの記事で霜降りって書くたびになんべんも霜降り和牛になってました。
あと何か月かしたら「去年のM-1優勝者誰だっけ?」「霜降り和牛だよ」って普通に言ってる自分がありありと想像できます。
ただの牛肉じゃん。