読書メモ(プリズンホテル/カササギたちの四季ほか)~浅田次郎の真骨頂!

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人生で面白かった本10選をあげるとしたらコレ入って来ちゃう。

それが浅田次郎の「プリズンホテル」。

夏~春の全4巻。

 

プリズンホテル 文庫版 全4巻セット (集英社文庫)

 

自分では絶対に手に取らなかっただろうな、この本。

浅田次郎は嫌いじゃなかったけど彼の著名な作品はほかにいくらでもあるし、得体の知れないタイトルと全4巻という長さで敬遠し続けただろうなと思われる。

 

 

先年他界した父が入院していた頃、移動時間や待ち時間が増えた母が本を読むようになり。

リサイクルショップで件の本が1冊50円で売られていたのを購入したそうな。

読み終わった母が「けっこうおもしろかったよ」というので、それをもらって帰ってきた。

タイトルから内容はまったく想像できない。四季で4冊に分かれていて、表紙のデザインは花札のそれだ。

いったいどんな本なんだ。

食わず嫌いは損をするし、いっちょ読んでみるか、とまったく期待せずに読みだした。

 

 

それが、超ハマり。ぐいぐいどんどん。爆笑の嵐。電車内での読むのマジ危険。

こんなに夢中になって、笑って笑って笑い通しだった本は久しぶり。

ほろりとさせるさすがの手法やきらりと光る表現の秀逸さが、登場人物たちの必死でクソマジメな滑稽を通り越した様子をますます引き立てる。

ひたすら笑いが止まらない。

ギャグ漫画もコメディ映画もコントもバラエティもかなわない。

笑いをこらえるのに必死。思い出しても笑っちゃう。

 

 

設定やら登場人物やらが前時代的で、暴力的で不器用でクソマジメに苦しんだり悩んだり。

序盤は古臭いアレコレが気になって特に女性は不快感を催す人もいるかもしれないけど、ぜひとも我慢して最後まで読んでみてほしい。

読後の爽快感と、一抹の喪失感とが、実際に旅行へ行ったあとのそれに限りなく近い。

読み終わってしまうのを心底残念に思った数少ない本だった。

 

 

好きすぎて面白すぎて読み返すのももったいない気持ちでいる。

あの世界にまた行きたいけど、行ったら帰ってくるとき寂しいしな、みたいな気持ち。

現在職場でなかば押し貸し中。Iちゃんも店長もおもしろがって読んでくれている。

 

 

個性の強い登場人物たちが違和感なく溶け込み、異常な舞台と異様な人々にもかかわらずそこには「どこにでもある人間の生活風景」と「どこにでもいる人間像」がある。

一生懸命で、それがために滑稽な彼らの姿は自分たちにすんなり重なるし、まさしく人間世界の縮図とも言える。

読めばきっといまよりも「人間が好きになる」こと請け合い。

それは「どんな人間でも」って意味でね。

 

まあでも、そんなしちめんどくさいことはさておき。

とにかく、笑えます。

浅田次郎はヒューマンドラマの代名詞みたいに感じていたけど、人間描写に長けているってことはそれだけ「なにがどんな感情を生み出すか」も理解しているってことで。

それはつまり、コメディを書かせても天下一品ってことになるんだろうな。

 

これぞ彼の真骨頂、なんじゃないかと個人的には思います。

人生で是非読んでほしい本のひとつ、プリズンホテル。メチャクチャおススメです。

 

 

ああ好きすぎてプリズンホテルの説明だけでえらく長くなってしまった。

あとは駆け足で行こう。

 

 

もともと浅田次郎との出会いは学生時代。

当時はやりの「鉄道員(ぽっぽや)」だった。

 

鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)

 

ほっこりさせる技ありの人間ドラマ短編集。

とは言ってもこれを読んだ頃のわたしは若すぎたので、人の機微とかわからず読んでた部分も多かったろうな。

また読み返してみないといけないな。

 

 

本って、読む人の状況、心境、環境なども著しく反映されるから、最低2回は読まないといけないなーっていつも思ってます。

 

 

いちばん最近読んだ浅田次郎はこちら

「地下鉄(メトロ)に乗って」

 

地下鉄に乗って (講談社文庫)

 

ファンタジーとノスタルジーに溢れた1冊。

時代を行き来する感覚は面白い。

この人は本当に筆の質が柔らかいというか、ふんわりした優しさとミント感というか渡る風に一抹の切なさが香る感じがほんとうに独特。

 

 

時代物もすっごい面白いです。

 

「壬生義士伝」

 

壬生義士伝 上下巻 セット

 

ただ時代物になるとちょっと筆が硬めになるというか、いやそりゃ描写の質が変わるのは当然なんだけど。

もともとカンタンに読みやすい系の筆ではないので、ちょっと難易度が増す感じはある。どうしたって内容はエグくなるしね。

 

まだまだ読んでいない、読みたい浅田次郎がたくさんあります。

そのことが嬉しい、と思える作家さん。

 

 

そしてそう思わせてくれた「プリズンホテル」は実に実に名著です!

 

 

 

四季つながりで最近読んだ本。

 

 

「カササギたちの四季」道尾秀介

 

カササギたちの四季 (光文社文庫)

 

1年通して雛形を備えた連作ミステリー。

この人の文章は以前どっかで短編を読んだきりだったのだけど、思ったよりスマート。

表現もところどころグッとくるものもあって、もっといろいろ読んでみたいかも。

 

お約束の雛形、個性的でコミカルな登場人物、どぎつすぎない設定と描写。

ともすれば退屈に陥る危険性のある「舞台」で、じょうずに読者の手を引いてくれる。

べたつきのないサラッとした読後感。

それぞれ1作ずつでも楽しめるが、4作にしっかり流れがあり、コンパクトにまとまっていて清涼感のある作品だった。

 

 

ともあれ読書は楽しいな。

 

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