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昔書いた短編小説モドキを載せてみる

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小説というとなんか肩肘張った印象になるけど、要は「物語」を書くのはわりと好き。

ただし言うまでもなく好きと上手はイコールではない。

短いのから長いのまでいろんな形態のモノを書いてきたが、なかなかどうして最後まで書き切れたモノって少ない。

 

いわゆる超短編なら書き切れるけど、そういうレベルになるとアイデアが命。

そこまで才に恵まれていないわたしなんかは、歌の歌詞を引き延ばした程度の物しか書けない。

 

でもほんとに時々着想を得ると、猛烈に書きたくなることがある。

だけど、情熱は長続きしないし、何より書くにはそれなりに時間がかかる。

時間がかかると、ハイもうおなじみですね、たるたるはバカなので忘れちゃうんです。

何書きたかったか、どこに着陸させたかったか、どんどん忘れていっちゃう。

 

それでも過去ログを漁ってたら短めの書き切ったやつを見つけたので載せてみる。

たぶん5~6年前のものだと思うけど、今読み返して当時なぜ自分がこれを書こうと思ったのかまったく思い出せなかったし、それがちょっと面白かった。

文章として面白いかどうかはまた別のお話だが。

いろいろツッコミポイントもあるけど、とりあえず手は入れずそのまま掲載。

 

***

 

「喉笛」

 

A子ちゃんとB男君は旧知の仲。

10年ぶりに街でばったり再会したふたりが恋仲になるのにそう時間はかかりませんでした。

 

B男君は当時から今も変わらずハンサムで、クラスみんなの人気者。

そんな彼が優しい言葉でA子ちゃんに寄り添ってくれたのですから、A子ちゃんが夢中になるのも無理はありません。

 

「君は僕の一番の理解者だ。世界一かわいいよ。愛してる」

歯の浮くような台詞も、B男君の口から発せられるだけでA子ちゃんを蕩かす心地よい音楽となりました。

 

しかしA子ちゃんは結婚したばかり。B男君にも妻子がおりました。

いけないと思いつつ彼に会うのをやめられないA子ちゃん。

 

ある日曜日、人目をしのんでいつものカフェにいそいそと向かったA子ちゃんに、B男君は1冊の通帳を差しだしました。

 

「俺平日は本当に忙しくて、銀行に行く暇もないんだ。どうしても明日中に必要なんだ、頼むよA子」

200万をおろしてB男君に渡してくれとのこと。通帳の名義がB男君ではなかったので不思議に思いましたが、その場は軽く受諾してしまいました。

 

翌日、言われたとおりにお金を手にしたA子ちゃんは、約束の時間より1時間も早くB男君の指定した「会社」に到着しました。変哲もないマンションの1室。

部屋番号を確かめて向かおうとすると、明らかに人目をはばかるような黒ずくめの男がやってきて、あたりを気にしながらこそこそとその部屋へ入って行きました。

不審に思ったA子ちゃんは部屋のドアに耳を押し付け中の会話を盗み聞き、たいへんな事実を知ってしまいました。

 

なんと、B男君は今はやりのオレオレ詐欺の首謀者だったのです。

 

走ってその場を逃げだし、手にしたお金のことを考えて身震いしました。

警察に駆け込もうか考えたのですが、やさしいB男君の笑顔を思い出すと躊躇われました。

それに、もしも新婚の夫の耳に入ればただではすみません。

 

結局A子ちゃんは、その場はとりあえず指定された時間に何食わぬ顔でお金を渡すことにしました。

 

次の日曜。またB男君は先週とは違う通帳を差しだし、同じように頼んできました。

A子ちゃんははじめ、問い詰めて改心を迫ろうと覚悟してきましたがそのやさしい笑顔に言い出せず、ただ首を横に振るだけにしました。

 

「なんでダメなの?俺本当に困ってるんだよ。A子なら助けてくれるだろ?」

「…やりたくないの。それと、もうこうやって会うのもやめたいの」

「どうして会うのやめるなんて寂しいこと言うんだい?俺はA子が好きだよ、愛してる。君のためなら何だってするよ。A子だってそうだろ?」

 

A子ちゃんは意を決して、昨日聞いてしまったことを伝えました。

こんなにわたしを愛してくれている彼なら、きっとわたしの言葉に耳を傾けてくれるだろうと信じて。

 

 

するとどうでしょう。やさしかった彼の表情は一瞬にして般若か阿修羅かという形相に変わりました。

「オマエ、それ誰かに言ったのか?言うなよ、絶対誰にも言うなよ。言ったらどうなるか、わかってるだろうな?オマエの旦那や家族や仕事先に、俺とのこと全部バラすぞ!」

 

声量は控えめでしたがまるで別人のようなドスの効いた声でした。

怖くなったA子ちゃんは手にしていたカップを取り落としそうになりましたが、震える声で言い返しました。

「だって、B男君、それは犯罪だよ。バレたら逮捕されちゃうんだよ。わたしはB男君のことが好きだから、そんな風にはなってほしくないと思って…」

B男君は大きなため息をつくと、また表情を緩めてA子ちゃんをまっすぐに見ました。

「そうだよ、だから、A子がだまっていてさえくれれば大丈夫なんだよ。これまでうまくやってきたんだから。わかるだろ?ただだまっていればいいんだ」

「でも…やっぱりダメだよ…B男君がやめてくれないなら、もう会えない」

 

B男君はがたんと大きな音を立てて椅子を立ち、冷たい目でA子ちゃんを見下ろしました。

「もういい、わかった。オマエは俺のためになってくれないって言うんだな。でも、覚えとけよ、オマエは共犯者だ。間違っても警察に行こうなんて気を起こしやがったら、生まれてきたことを後悔させてやるからな」

やくざ顔負けの捨て台詞を残して彼は去って行きました。

愛するB男君を引き留めようという気持ちより、豹変した彼への恐怖感が勝り、A子ちゃんはかたかたと体を震わせて彼の後姿を見送りました。

あの人、誰?あんな人、わたし知らない。

 

それからたっぷり3日間誰にも言えない重しを胸に過ごしましたが、ついにA子ちゃんは警察へ行く決心をしました。

共犯でも、浮気がばれても、それはもうしょうがない。犯罪を知らんふりなどできない。

彼女を動かした感情は社会の一員としての自覚だったのでしょうか。

 

しかし、意を決した彼女の話も警察にはまるで取り合ってもらえませんでした。

証拠品などひとつもなく、肝心の指定された「会社」だったハズのマンションは、何年も前から契約者のいない空き部屋だったのです。

しかもB男君との唯一の連絡手段だった携帯電話とメールアドレスさえ、すでに連絡は取れなくなっていました。

A子ちゃんはB男君の家さえ知りませんでした。

虚言と判断されるのも仕方のないことでした。

A子ちゃんは誰にも言えない秘密を抱え込み、途方に暮れて日々を送りました。

 

そんなある日、A子ちゃんの古くからの親友C美ちゃんが、最近B男君と会っているという噂を耳にしました。

C美ちゃんはA子ちゃんよりも気が弱くおとなしい子でした。もう何年も連絡を取っていませんでしたが、B男君の蛇のような目を思い出し、心配になって彼女に連絡を取ってみようと電話をかけました。

いきなりB男君について切り出すのも憚られたので、とりあえず1週間後に会う約束をしました。

 

電話から3日後、A子ちゃんの家に1通の封書が届きました。宛名は印刷で、差出人の名前がありません。

封を切るとそこには信じられないものが入っていました。いったいいつ撮られたのでしょう、A子ちゃんのベッドでの姿態写真です。

心当たりはB男君しかありません。すぐに焼き捨てましたが、そんなことをしても無駄でした。

 

同じものが夫の会社にも、A子ちゃんの実家にも、夫の実家にも、そしてインターネットを通じて同級生たちのもとへもばらまかれていたのです。

 

A子ちゃんにはもはや事態を収拾するすべはありませんでした。

C美ちゃんとの約束の場所へも出向きましたが、当然のように彼女は来ませんでした。

誰ひとり、彼女の言葉に耳を傾けてくれはしませんでした。たった1通のメールの返信さえ彼女のもとには届きませんでした。

 

その後夫とは離婚、親からは縁を切られ、故郷の街へも帰れず、ひとりぼっちで彼女は流れて行きました。

 

 

それから5年の月日が過ぎました。

A子ちゃんは水商売を転々とし、場末の風呂屋に沈んでいました。

いっぽうB男君はといえば、ちょっとした事業を起こし成功をおさめ、妻子とともに都内で豪華なマンションに住み高級車を乗り回し、幸せそうな笑顔を雑誌や新聞上に晒すまでになっていました。

 

A子ちゃんはこの5年、あらゆる時間と金と情熱をかけてB男君の消息を知る努力をしてきました。

彼が成功をおさめた今ではそれを知るのは難しくありませんでした。

 

B男君は毎週土曜日の早朝、この公園をひとりでジョギングします。

A子ちゃんは右手のナイフを握りしめ、彼の喉に突き立てたときに驚愕に見開かれた眼で絶望の朱に沈んでいくB男君の顔を想像し、喜びに身震いしました。

 

ただその瞬間を見るためだけに、A子ちゃんは今日まで生きてきたのです。

 

 

そして今、A子ちゃんは念願の彼の喉笛に今まさに食いつこうとしています。

朝靄の中、B男君の姿が遠く見えてきました。

 

きょうもいい天気になりそうです。

(おわり)

 

***

 

何が書きたかったんだ私。何考えてたんだ私。

数年経つと、当時の自分が何を考えていたのかすら忘れてしまう事実が今は怖いわ。

 

今後もなにか発掘したり衝動に駆られたらこういうのも載せるかも。

数が増えたらカテゴリ分けしてもいいかな。

 

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ちなみに作り話ははむぺむのほうがはるかに得意です

 

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