たとえばここに1個のケーキがある。
30歳のAさんと14歳のBくん、それに11歳のCちゃんがいたとしよう。
Cちゃんはかしこい子で、自分が子ども扱いされることをとても嫌う。
Bくんは育ち盛りの元気な子で、天真爛漫が魅力の少年。
Aさんは普通の大人だが、このケーキが大好き。どんなに行列して並んでも食べたいほどにこのケーキが大好物。
そしてそれをBくんとCちゃんは知っている。
当然この場合の正解は「分けて食べればいい」になるのだが、ここではあえてこのケーキは「分けることができない1個のもの」であることを前提に話を進める。
30歳のAさんは唯一の大人。
いくら自分が好きなケーキでもまさか子供たちの前で真っ先に手を伸ばして食うわけにはいかない。それこそ大人失格だ。
ここはやはり一番年少のCちゃんに勧めるべきだろう。
いや待て。Cちゃんは自分を子ども扱いされることを嫌う。
Cちゃんに食べてもいいよと言ったらきっと彼女は「わたしが一番子供だからそう言われるのね」と気を悪くするだろう。
それじゃBくんに勧めるか。屈託のない性格だから勧めれば遠慮なく食べるだろう。
いやいやそれじゃ勧められなかったCちゃんはどう思うだろうか。
どういう理由でBくんに食べていいと言うのかまったくわからないだろう。
それにもしBくんが断ったら?
それからCちゃんに勧めるのもCちゃんに対して失礼でもある。
それに万一ふたりとも断ったら?「じゃあ」ってAさんは食えるのか?
なんだかみっともない話だな。
そうこう逡巡しているうちにBくんとCちゃんにもAさんの苦悩が伝わってしまう。
なんか悩んでる?Aさんが食べたいのかな?
それじゃ勧められても遠慮したほうがいいかな?
ああ早く決めなければ!時間が過ぎるほどにBくんもCちゃんも困っていくじゃないか!
そしてそういうときに限って場の空気を読めないDさん(40歳)とかが現れて 「おっ、ケーキうまそうじゃん。何、誰も食べないの?じゃ、いただきまーす」
てな感じで気を回しすぎることって、よくある。
そうして回し過ぎて損をすることは正直多いけれど、回し過ぎて悪いことはないと個人的には思う。
まったく回さずにあとで後悔するよりはマシだ。
ただ、ぐるぐるしてる間に機を逸して後悔するんじゃおんなじだ。
決めるときには速度が必要。ギアチェンジはスムースにいかないと、ね。
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