去年一躍話題をさらった映画「カメラを止めるな!」が地上波初放送ってことで楽しみにしていた。
前評判でさんざん言われていた通りネタバレできないというか知ってしまったら面白さ半減する種類の映画なので、未見の方はくれぐれもこの先は読まずにお帰り下さい。
で、見たらまた来て。
すごくおもしろかったという話は聞くのにその中身はあまり語られていない、謎の映画。
低予算で封切り時の公開上映館もたった2館とのことで、そこまで流行るには相応の理由があるのだろうとものすごく楽しみにしていた。
結論から言うと、なるほどたしかに面白い映画だった。流行るのも納得。
こんだけハードル上げて期待値高かったのにもかかわらずちゃんと満足できたからね。
とはいえ、地上波放送開始前に出演者たちから
「最初の30何分は我慢して見てください!」という前振りがあり、正直それがなかったら最後まで観れたかどうか自信がない。
つまらないとはいえないが、もともと好きじゃないジャンルというのもあり、集中して努力しなければ見続けることは難しかっただろう。
「見る側に努力と我慢が必要な映画」であることは確かだ。
最初の我慢のパートは、ひとくちにいうと「出来の悪いゾンビ映画」。
学生の自主制作レベルの、無駄に詰め込んだ感じの、雑なパート。
前評判がよかったのと、それらがまるごと「前フリ」であるという情報を事前に得ていたおかげで画面に集中して見ていた。
妙な間があり、おかしな台詞回しがあり、あきらかにスタッフが映り込んでしまった的な映像があり、どこまでが演出でどこまでが何なのか見ているほうも混乱する。
ようやく我慢の30数分が終わり、一度目のエンドロール。
CM明けに2部パートが始まった。
ゾンビと関係ないシーンの連続。会社の打合せやらありきたりな家族のシーンなどから、だんだんと1部の映画が「ゾンビチャンネル向けの前代未聞のワンカット生放送映画」だということがわかる。
そしてそれがわかると、我慢の30数分で理解できなかったあれこれがつながってくる。
個性的すぎるキャストの面々が決定し、ここからさらにあれこれの伏線が張られている。
必要最低限の情報だけを上手に詰め込んであり、1部と3部を巧みにつなげていく。
いよいよ謎解き種明かし、爆笑必至の第3部。
ここからは1部で見たワンカットゾンビ映画を別アングルから後追いするかたちで話が進む。
2部で仕込んだ情報をあちこちで伏線回収を行い、それらがつながっていくさまは見ている側からすると快感ですらある。
生放送ワンカットだからこそ起こりうる数々のトラブル&アクシデントと、それらをどうにかしようと足掻くスタッフやキャストたちの動きのすべてがあまりにもコミカルで笑いが止まらない。
ただ表面的に面白い以上の、固まった毛玉がほどけていくような面白さがあった。
さらに本編終了後、本物のエンドロール時には「メイキングのメイキング」映像が流れる。これがまた秀逸。
ネタばらしのネタばらしみたいな構造になっていて、ほんとうに最後まで楽しめた。
すごく面白い映画だったが、手法としては真新しいとは言いがたい。
本的というか小説的。小説であればこういった手法で書かれているものは山ほどある。
先に舞台装置を全部出して、あとから謎解きネタばらしで時系列を追っていくってやり方ね。けして新しいものではないはず。
ただ、映像ではあまりない。意外な盲点だよね。
もちろんこれまで誰もやらなかったのには理由があるだろう。
見る人に我慢を強いるから。
これだけ事前に「面白い!我慢して見て!」って言われてたからこそ見れたのであって、冒頭でも書いたけど情報が全くない状態でこの映画を観だしたらまず開始5分くらいでチャンネル変えちゃってただろうな。
だからこそ「映画館で観るべき映画」だと思う。映画館なら金払って入場した以上我慢して見るだろうからさ。
最初にこの映画を観てブームの火付け役になったであろうごく一部の映画好きたちのおかげでこの作品は世に広まったし、わたしもこれを知ることが出来て見ることができた。
カメラを止めるな!の大ヒットは、ひとえにその人たちの功績であろう。
いまどきはどれほどおもしろい作品であるか、だけでなく、それを誰がどうして広めるか、ってことも重要になっているんだね。
まったく日の目を見ずに埋もれていく超名作もきっと山ほどあるんだろうな。
ともあれ映画「カメラを止めるな!」、ここ最近ではもっとも度肝を抜かれた、非常に面白い映画でした!