映画メモ「シン・ゴジラ」~大根の種類

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映画「シン・ゴジラ」をテレビ視聴。

前回のテレビ放送の時にも見たので2回目だが、何度見ても面白い。この先も何度も見る気がする。

 

シン・ゴジラ

 

もともとゴジラが好きな訳ではない、というか、ちゃんと見たことはない。

特撮系も食わず嫌いでこそないが、それほど得意なジャンルとも言いがたい。

 

でもこの作品は、そういったジャンルのくくりにおさまりきれない、全方位から見て単純に楽しめるスペクタクルパニック映画と言える。

 

 

以下内容のネタバレ含みます。未見のかたはご注意を。

 

 

 

庵野秀明監督とあって、全体的なつくりがエヴァンゲリオンを彷彿とさせる。

っていうかほぼまんまエヴァだね。エヴァ実写版というか、実際場面説明や人物紹介のキャプション類も、音楽も、エヴァで使われていた手法がいかんなく発揮されていた。

 

いっぽうで庵野自身の「ウルトラマン好き」を感じさせる構図も多い。

出てくるはずがないのに「いつウルトラマンが出てくるのか」とワクワクしてしまう感じ。

いわゆる怪獣もの、巨大生物による「町が破壊される描写」はそこを血の通った場所として見なければ、が前提になるが、単純に視覚的に面白い。

アクションものを見る感覚だ。

 

軍事マニアにも嬉しい映画だ。

実際の自衛隊などへの取材をもとに、現存する戦車やヘリにB-2ステルス戦略爆撃機まで登場する。

それほどマニアじゃないわたしも、それらの武器兵器の映像には心沸き立った。

 

ゴジラの形態が変わって行くのも面白い。進化して第〇形態になっていくさまはこれぞ特撮モノという魅力がある。

口から炎ではなくレーザーみたいなのを吐いて町を薙ぎ払うさまは、「風の谷のナウシカ」に出てきた巨神兵そのままの姿だ。

 

 

庵野監督が以前撮った「巨神兵東京に現る」での演出とかがいかんなく発揮されてる。

たしかエヴァQ公開時に同時上映されたんだっけね。

わたしはテレビで放送されたときのオマケで見たけど、10分くらいの短編だったと思う。

DVDはこれに収録されているようす。

 

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そしてなんといってもこの映画でもっとも面白い部分は、巨大不明生物に対する国家としての対応の姿。

ファンタジーなのはゴジラと言う存在ただ一点で、それ以外の部分は極めてリアルな描写。

未曽有の巨大災害、3.11を受けての映画だとはひと目でわかる。

それをふざけるわけでもなくうやむやにするでもなく、現実に向き合うとどうするか、どうなるか、を国民視点ではなく政府としての対応視点に絞っている。

 

いよいよなんの武器も歯が立たないとなったときの、諸外国による核兵器の使用の話が出た時はフィクションとわかっていながらゾッとした。

自分の国を守るためには他国の犠牲はやむを得ないと、人間はいまだそう思っている。

当然と言えば当然だが、同時に「安全」とは何によって成り立っているのかを改めて深く考えさせられた。

 

 

ゴジラと相対するキャスト陣は非常に豪華。

主演の矢口役・長谷川博己をはじめ、実力派俳優たちががっちりと脇を固めている。

赤坂役の竹野内豊、官房長官役の柄本明、臨時総理代理の平泉成、統合幕僚長役の國村隼、泉役の松尾諭、尾頭役の市川実日子らの名演が光った。

 

なかでもひときわ輝いていたのは防衛大臣役の余貴美子と総理役の大杉漣。

彼らの名演のおかげで、これだけ非現実的な話のハズなのに妙に手に汗握るまでに引き込まれていった。

ヘリ撃墜されたときは声出たよ。

 

 

そんな中、良くも悪くも異彩を放っていたのはパタースン役の石原さとみ。

公開当初から賛否がものすごくて、確かに見ていると妙に印象に残る。

単に美人すぎるからではなく、かといって演技が下手かというと正直それほど下手には感じなかった。

もちろん役どころがインパクト強いってのはあるんだが、なんとなく画面に馴染まないと言うか、感覚としては「浮いてる」に近い。

 

映画を通して見ても、彼女だけなんかどこか違和感がある。

それを演技の世界で下手と言うかどうかはわからないけど、でも不思議とその違和感は嫌じゃないんだよね。

 

よく「大根役者」って言われる人は、誰が見てもホントに台詞も棒読みで、作品をぶち壊しにしちゃうような人を指すと思うんだが、石原さとみから受ける印象はそういうものではなかった。

 

演技を生業にしている人たちは、たぶんほんとに徹底的に「役になりきる」ことができて、だからこそ見る人は心を動かされるんだと思うけど、ときどき「自分が残ったまま」演技をする人はいて。

それは完全に「私を殺せる」演技のプロの眼から見るとどうなのかはわからないけど、素人から見るとそれが案外味があってよかったりもすることがある。

 

わたしの感覚では森本レオとか、鷲尾いさ子とか、木村拓哉とかがそういうヒトにカテゴライズされる。

 

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今回の石原さとみからもそういう印象を受けた。

 

それが同業者たちから見るとどういう感じなのかはわからないけど、いち視聴者としてはそういう役者さんがひとりくらい紛れているのもそれはそれで面白いなと思う。

 

ひとくちに大根と言っても種類があるんだろう。

煮ても焼いても食えないような大根だったらどうしようもないけど、味付け次第ですごく美味しいものになる、こともあるのかもしれない、などと思った。

 

 

だいぶ長くなったけど、「シン・ゴジラ」、最高に面白かったです。

ブラボー!

 

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