路線バスに乗っていた時のこと、一人のおじさんが途中の停留所から乗り込んできた。
乗ってきた瞬間からずっとなにやらモゴモゴブツブツ言ってる。
ひとりごとをいう人は珍しくもないし車内も混み合っていたので最初は気にも留めなかったが、一人降り二人降りしていくうちに内容がはっきりと聞き取れるようになった。
不思議なんだがひとりごとを大きな声に出して言う人って、高確率で滑舌がいい。
そういうのは何言ってるかわからないくらいのほうがいい気がするんだが、なぜかはっきり聞き取れることが多いんだよね。
もちろん無言なのが当たり前の空間だからこそ余計に耳が向いちゃうという事情もあるんだろうけど。
手にはルーズリーフ1枚とボールペン。
ひとりごとには人の名前がぼちぼち出てくる。
「あーでもなあ、どうすっかなー」
「○○さんはでもなあ、一応やっとかないとマズいだろうなあ」
「××さんは去年来なかったしなあ。でも付き合い長いしなあ」
「いやいや△△さんははずせないでしょ。でもなあちょっと□□なんだよなあ」
どうやらお歳暮かお中元あたりの贈りものリストかなんかを作っているようだ。
真剣に時折漫画のようにがりがりと頭をかきむしっている。
そして「でもなあ」が口癖のようだ。
乗ってきた瞬間からずっとなにやらモゴモゴブツブツ言ってる。
ひとりごとをいう人は珍しくもないし車内も混み合っていたので最初は気にも留めなかったが、一人降り二人降りしていくうちに内容がはっきりと聞き取れるようになった。
不思議なんだがひとりごとを大きな声に出して言う人って、高確率で滑舌がいい。
そういうのは何言ってるかわからないくらいのほうがいい気がするんだが、なぜかはっきり聞き取れることが多いんだよね。
もちろん無言なのが当たり前の空間だからこそ余計に耳が向いちゃうという事情もあるんだろうけど。
手にはルーズリーフ1枚とボールペン。
ひとりごとには人の名前がぼちぼち出てくる。
「あーでもなあ、どうすっかなー」
「○○さんはでもなあ、一応やっとかないとマズいだろうなあ」
「××さんは去年来なかったしなあ。でも付き合い長いしなあ」
「いやいや△△さんははずせないでしょ。でもなあちょっと□□なんだよなあ」
どうやらお歳暮かお中元あたりの贈りものリストかなんかを作っているようだ。
真剣に時折漫画のようにがりがりと頭をかきむしっている。
そして「でもなあ」が口癖のようだ。
彼の中で段階は次に進んだようで「何を贈るか」を検討し始めたようだ。
だがなぜか商品名は出てこない。
「アレかなあ…いややっぱあっちだろうな…でもなあ…」
「いやそれよりはアレのほうが…でもなあ」
なんでひとりごとなのに「アレ」ばっかりなんだろう。どうせなら商品名聞きたいのに。
しばらく耳を傾けていたが名称は出てこない。
彼の脳内にはカタログが広がっていることだろう。
興味を失ってきたころ、彼がやたらはっきりとした深刻にさえ思える口調で
「夕張メロンか…」
とつぶやいた。
うっかり吹き出しそうになったのをどうにかこらえた。
それを呟いた時の彼の顔はきっとものすごく遠い目をしていたんだろう、見ずともわかる口調だった。
思い、馳せてたんだろうな。なにか夕張メロンに思い出があるのかも。
そんなどうでもいいことを考えてたらすんごいメロン食いたくなったというどうでもいいお話。
***
メロン3曲