長い夜(中)

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以前からIちゃんとはお互いの旦那を会わせてみたいね、という話はしていたが、聞けば聞くほどどちらも酒癖がよろしくない。
ゆえにやっぱり会わせないほうがいいかもね、と決着がつきかけていたところだった。


そんなふたりがこんなところで運命のエンカウント。
これはもう、挨拶だけで済むはずもなかろう。


とりあえずラーメンをやっつけて店の外で挨拶を兼ねて作戦会議。
手近な居酒屋へ雪崩れ込む。
Iちゃんの旦那さんも翌日仕事とのことなので「一杯だけね」と何度も断ってくる。


申し訳ないがこの巡り合わせで一杯で終わるはずがない。
もうこの時には、はむぺむは完全に補助スイッチが始動していた。


そうは言ってもさすがにこの店でそこそこ飲んでお開きにするのがお互いにとって賢かろうとまだわたしは思っていたが。
ひょんなことからフィリピンパブの話題になった。

「よっしゃ今から行こうぜ」

うん、いいと思うよ、男同士で行っておいで。
とわたしが考えていたときにIちゃんが不用意に衝撃の一言。

「あ、でも確かにちょっと行ってみたいかも…」


うおぉぉぉぉい!

いやちょっと待て。
確かに行ってみたいよ、

行ってみたいけどどう考えてもソレ今じゃねえだろ!

何が悲しゅうて初対面の夫婦ふた組でフィリピンパブ行かなあかんの!?


しかしもう遅い。口から出た言葉は取り返すことはできない。
ばっちり聞きつけたはむぺむは一気にテンションが上がりすでに決定事項。
こうなったらもうしょうがない。腹くくろう。


そういうわけでわたくしは初フィリピンパブ(あたりめーだ)。
残念ながらショータイムはとっくに終わってしまっていたが、カタコトのフィリピーナたちがわらわらやってきて口々に飲み物をねだる。うち2人は女性とはいえ、頭数だけ見りゃこっち4人だからね。

オイオイ、これいくらかかんだ。マジ怖え。


はむぺむは慣れた様子ですぐさまカラオケとダンスに走る。
予想通り彼はピーナたちとのトークよりも踊ってるほうが好きなようだ。
ピーナたちからもしきりにナンカウタッテナンカオドッテとねだられていた。
聞けばいつもダンスシテルネとのこと。うんだいたい知ってた。


もうこうなりゃアホになって楽しんだもん勝ちだろ。
完全にシラフのわたしは一緒になって踊り歌いまくった。
旦那にくっついてフィリピンパブにノコノコやってきて、言葉もロクに通じないピチピチの姉ちゃんたちに混じってノリノリで歌い踊る40女。


うおぉぉすさまじくイタイぜ我ながら!


なんかもう、スタッフさんもほかのお客さんも、ほんとごめんなさい。
でももうせっかくだから楽しませて。
この際だからはじけさせて。


日にちが明けるころにさすがにマズイだろということでいったん解散、Iちゃんご夫婦とはここでお別れ。
急だったのに連れ回しちゃってごめんね、ありがとう。おかげで楽しかったよ!


そしてわれわれ二匹はそのまま居残ってもう少し遊んだが、もう閉店時間も近かったのでスタッフの数も減り、1時間弱でわれわれも退散。


しかし店を出ると完全にエンジンに火が入ってしまったはむぺむは案の定「飲み足りない」と言い出した。
そこへおずおずと近づいてくる若者ひとり。


「いまから飲めるバーあるんですけど、どうですか?」


オイオイ、君何者?タイミング良すぎ。


(つづく)

***


ピーナたちにねだられてたるたるが歌った曲

君の瞳に恋してる↓


君の瞳に恋してる / ボーイズ・タウン・ギャング



ダンシングクイーン↓

ダンシング・クイーン



ダンシングヒーロー↓


荻野目洋子/ダンシング・ヒーロー(Eat You Up) MV [New Dance Ver.] (Short Ver.)

 

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