前回の続き。
都内飲食店の単発の派遣が済んだころには、もう地元でレギュラーを探そうと心が決まった。
毎回違うところへ行くのは負担が大きすぎる。もはやそれは仕事じゃなくてレジャーだよな。
仕事すんならやっぱ近くである程度腰据えてやんないと。
まだ故障中だったのでこのあと各種面接でわやわやするんだが、それは次回のエントリーに譲るとして。
その後面接ののち採用が決まったあたりで、ようやくわたしは正常な思考ができるようになった。
イヤ、仕事で船ってアホかわたし。
電車でわざわざ海行って船乗るってなんだそりゃ。
遊びじゃねんだぞ。
だが、皮肉なことにわたしは故障してるときの方が客観的に見て面白い動きをする。
よっぽど舞い上がっちゃってるときじゃないと、そんな行動しない。
せっかく壊れちゃってる自分がこんなきっかけ作ってくれたんだから、享受しておいた方がいいでしょう。
人生何事も経験。こんなチャンスはきっと二度とない。
というわけで一日、予定を入れて、行ってまいりました派遣@船!
朝電車に揺られて海の見える駅まで。
乗り慣れない久しぶりのラッシュに疲れながら、都会の海近くのビル街へ吐き出され人の波に乗って歩く。
ほとんどの人影が各種ビルへ吸い込まれていった頃海が見えた。
おおおー、うみ!ふね!
海とか船とか好きなんです
目的地へは1時間以上前に到着。
余談だがこの「はじめての現場の時は余裕持って早く行く」性質は派遣に向かないよね。
移動時間+余剰時間で半日分くらい働けちゃうわ。
茶店でもあったら時間つぶしたかったのだが、少し周りを歩くも、海沿い過ぎてなんもない。
やむなく早すぎるのを承知の上で突撃。
鉄製の古めかしい扉を開くとスタッフルームがあり、室内はこれまた古めかしい。
そこに年配の男性がひとりでパソコンに向かっていた。
初めての旨を話して制服と名札を受け取り、さっそく着替え。
クリーニング済みの制服が各サイズずらりと揃っている。
こういうところは先日行った工場とある意味一緒だ。
当日の持ち物は黒パンプスと肌色ストッキングと聞いていたのでおそらく制服はスカートだろうと予測していたが、大当たり。白のかっちりめのシャツに膝ちょい上くらいの黒スカート。
うわーこんくらいの丈のスカートなんて履くの何年振りよ。
つか今時制服スカートって、もうホント昭和だわー。
着替え後その男性と少し話すと、今後は僕(船の会社のバイト管理)から直接シフト訊くから連絡先を交換しましょうと言われちょっと面食らう。
えっと、正直たぶんもう来ないと思うけど…
と思いつつ、働く前から拒むのもおかしい話なので言われるまま交換。
そうこうしとる間にぼつぼつほかのスタッフさんが集まってきた。
船の常時乗組員と派遣・バイトは支度室が異なっているが、あとで聞いた話だとバイトや派遣でも常時組と同じような制服を着て同じような仕事をしてる人も結構いるそうだ。
実際現場で直接指示をくれた人も派遣だったとあとで聞いてびっくりした。
独特の世界があるみたいだ。そこはさすがに1回の乗船じゃ知ることはできなかったが。
派遣会社も2社入っているそうで、わたしが登録したところともう1社、あとからやってきた派遣の女性スタッフたちは後者から来たと言っていた。
今日がはじめての人も結構いてひと安心。
乗船までまだまだ時間があったので、おおはしゃぎで記念写真を撮ったりした。
勤務開始時刻10分まえくらいにようやく乗船。
船のなかは各階層に分かれている。わたしの本日の担当は1Fのいちばん大きい部屋。
各階にそれぞれ大小部屋があり、厨房は船の真ん中あたりに2階層くらい。
部屋へたどり着くまでの間に通る廊下や階段はどれも広く豪華だが、裏側に回るといっきに船だということを思い出す。
階段は急で狭い。個人的にはそっちのほうがテンション上がるわけだが。
勤務開始とはいえ船が陸を離れるのはまだだいぶ先。
つまりお客さんが乗ってくるのもまだまだってことだ。
受け持ちの部屋は、修学旅行かなんかの学生さんたちのようで、各テーブルに「3班 女子」とか貼ってある。
なるほど、そういうパターンなのね。
披露宴なんかでも使われるようで、丸テーブルが正面から3列で後ろまで続いている感じの配置。
各列40名ずつくらいになるのかな。
1列2名ずつの担当で、責任者クラスがフォローで2,3名ついてくれると言った布陣。
派遣およびバイトの6名のうち、今日初めてって人がわたし含めて3名。
うーん、なんというかスゴイな!これで回っちゃうのか!
お客さん乗船までの間、テーブルセッティング、食器やグラスの準備と掃除、厨房の手伝いもさせてもらえた。
厨房はちょっと驚くほど広い。船のなかとは思えない。
ダムベーター(業務用のちっちゃいエレベーターのこと。余談だが飲食の方はおなじみだろうが、ダムはもともと差別用語のためその名称を使うことは推奨されないようだ)どころではなくエレベーターが(しかもデカイ)厨房内にあり、それで食事ほか必要な家具等も運ぶようだ。
これまであまり高級系の店で働いた経験はないため、ホールにいると落ち着かない気持ちになったが、厨房はどこも一緒で、皿準備したり盛り付け手伝ったりしてるほうが安心できた。
そうこうしているうちにお客さんが乗りこんできた。
どうやら中学生のようだ。
全員が席に着くころ、出航。エンジンが唸りを上げだしたのを足の裏で感じた。
いよいよ陸を離れるんだ。窓の外をちらりと見やると水の上をゆっくり動く景色が見えた。
海は穏やかで、船は滑るように走った。
テーブルマナー研修も兼ねているそうで、船のスタッフがマイクを取り、ジョークを交えながら進行していく。
オードブル、パンを2回、スープ、メイン、デザートとコーヒー。
出しては下げ出しては下げの繰り返し。
なるほどコース料理って忙しいんだな!
皿3枚持ちもできなくはなかったが、落として大惨事よりはましだろうとこの日は2枚でちまちま。
途中習慣で空いたパン皿を下げてしまい(まだ使う)慌てたが、ほかはまあ大過なくコース終了まで行きついた。
外の景色を見るような余裕もなく、ひたすら配膳係をしていた。
配膳人って表現にものすごく納得。
中学生たちが一旦席を離れ自由時間になると、慌ただしく片付け。
とはいえ船が接岸するまでは中学生たちの席なので、次のセッティングはまだできない。
なので、このタイミングで交代で10分休憩を取らせてくれた。このへんも良心的だ。
今日が初めてと言う男性と一緒に休憩室に向かったが、船内複雑な構造で軽く迷子。それでも慣れないパンプスで足が痛かったので、休憩はとてもありがたかった。
一緒の男性は見事に靴擦れしてて見てるこっちが痛かった。
そしてそのとき話しながらはじめてまじまじと顔を見たが、だいぶイケメンだった。
若けっ。笑顔眩しっ。
あとで戻ってもうひとりのバイト君を見たが、こちらは背も高く先のカレに拍車をかけたジャニーズ真っ青のイケメンぶりだった。しかもこっちはてめえがイケメンなことを自覚してる風な振る舞い。少女漫画の登場人物みたい。
まぁそりゃモテるべな、同年代でこんなイケメン見たことないわ。年頃の娘だったら一撃だね。
わたしはイケメン反応がかなり鈍いのでそんときまで全然気づかなかったが、なるほどこういう仕事を選ぶ、特に若い殿方ってのは、自分の容姿に自信がある人が多いのかもね。
そしてある程度年を取ってる人たちはそうでもないっていうのがまた不思議だが。
接岸後中学生たちがはけると、次の準備。
午後からまた学生を乗せたクルーズがあるそうで、今度はバイキング。
皿を拭いたりしながら一緒の勤務の人たちと他愛もないおしゃべりをし、テーブルを整え食器を準備して終了。
職種柄陽気な人も多く、とても楽しくエキサイティングな数時間だった。
すごく面白かったし、平日の昼だけでも使ってくれるとなりゃ、レジャー半分で続けてもよさそうなもんだが、仕事として見ると、ひとつしみじみ思ったことがあって。
あれは、接客ではなく、配膳だ。
わたしが好きな仕事は、配膳じゃなかったや。
そう考えると接客って意外と範囲が狭いんだな。
お客さんと直でコミュニケーションをはかることが仕事に付されることが接客なのであって、配膳とかレジチェッカーとかは接客とは厳密にはちょっと違うんだな。
かといって水商売はまた畑違いなわけで、今思えばカツカレーみたいな店っていろいろデジタル化が進む現在においては、やっぱり結構貴重だったんだな。
というわけで、就職活動編に続く(誰得)。
船の仕事は…うーん、まあ、機会があればまた行くかも。
すごく楽しいし、裏側ならではの面白さ満載だけど、継続して通うとハマりすぎちゃう気もしてんだよね。
乗ってる人々もひとりひとり3時間ずつくらい面談したいほど面白そうだし。
通勤がねー。家からチャリで通える距離だったら毎日でも働くけどなー(本末転倒)
でもやっぱ、客で乗りたいよね!(あたりめーだ)