黙ってさえいれば

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TOP絵は使い回しのカット的落書きで、本文は過去ログから手を入れずそのまま移植。

だいぶ昔に書いたものなのでいろいろヒドイですが薄目でお読みくだされば幸いです。

 

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アタシは自分が凡庸な人間であるという自覚を常に持っている。

人並みの顔立ちに人並みのスタイル、人並みの頭脳に人並みよりちょっと下の身体能力。

すべてがどうひいき目に見ても中の中、容姿端麗や才色兼備などというお言葉とは程遠い、言ってみればその他大勢エキストラ的人間だ。

 

自慢じゃないが子供のころなど「かわいい」という単語を頂戴したことがない。

子供である自分がいやだったせいか、斜に構えた態度が大人たちにとっても仲間たちにとってもとにかく「マセたガキ」。生意気だったのだろう。

 

異変が起きたのは幾つくらいのころだろう。アタシの顔立ちがそう変わることもないから、世間一般の美的感覚が変わったのだろう、にわかに顔立ちを誉められることが増えたのだ。

 

それまで「顔立ち」を誉められた経験がほとんどなかったアタシにとってカルチャーショックの始まりだった。

 

子供のころからとかく容姿に自信を持たなかったアタシは、容姿以外のファクターで「よい自分」を作ることを覚えていた。具体的に言えば振る舞い、仕草、表情、そして言葉遣いである。

 

早い時期に「かわいい女」でいることを無理だと悟っていたため、「強い女」のキャラを必死に作り上げていった。

「強くてカッコいい、男に負けないデキる女」、そんなフレーズと歩んできたアタシが突然容姿を誉められるのだから晴天霹靂。

 

だが人間中身も外見もそうは変わらないものだ。長年かけて作り上げてきた「強い女」のイメージが裏目に出ることになってしまう。

 

それはつまり、「お前って黙ってればいい女なのにな」ってこと。

 

異性を異性として認識する歳になればなるほど、会う人会う人そう言われるようになった。

黙ってるときのアタシとしゃべり始めたあとのアタシはまるで別人、強すぎるキャラとでかすぎる態度に外見だけで好意を持ってくれた男どもは圧倒されてしまうらしい。

戦友、悪友、手下と子分、そんな男がアタシの周りにどんどん増えていくばかりだった。

 

そしてそんな自分を、今も昔も変わらず最高に気に入ってるのは他でもない自分自身なのだ。

 

「黙ってさえいれば」。

容姿でしか人間の価値を認められない輩は、マネキンでも抱いて寝てやがれ。

  

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