TOP絵は使い回しのカット的落書きで、本文は過去ログから手を入れずそのまま移植。
だいぶ昔に書いたものなのでいろいろヒドイですが薄目でお読みくだされば幸いです。
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アタシは他人というものを信用して久しい。
だがそれはある程度素姓の知れてる他人のことで、赤の他人のパッセンジャーに関してはすべて悪い人だと前提を置いている。
アタシは高校生の頃からわりといい加減で財布を机の上に出しっぱなしにしてたこともしばしばあったが盗難に遭った事はない。
盗難が頻発していたのは事実だが、アタシの素人考えでは「学校内」という個人を容易に特定できる空間ではすぐに足がつくからそうそう被害に遭うモンでもないだろ、と思っていた。
ところがひとたび電車に乗ると用心深さが尋常でなくなる。動いている空間に常に不特定多数の人間が出入りするわけで、スリにでもあったら泣き入れるしかなくなる。
だから鞄を過剰なほど守る意識が働くわけだ。
小学生の頃、アタシと母が乗った車が後続車に追突されたことがあった。
幸いにも怪我は大したことなかったのだが、母は病院に行ったほうが有利だと考えたらしく警察と救急車を呼んだ。
案の定救急車の方が先に到着した。
母はさっさと元気に救急車に乗り込み、夕暮れの現場には追突した車を運転していたおじさんと幼いアタシだけが残った。
近所のおばさんに頼んで父を呼んでもらう。寒いからうちで待っていたら、という優しい申し出に頑なに首を横に振っていたアタシは母に対して怒りを覚えていた。
警察が来て、現場検証を始めた。
アタシとおじさんの双方から話を聞き捜査をすすめる。警官は当事者の母がいないためやむなく幼いアタシに詳しい事情を聞かざるをえなかったのだ。
その後特にトラブルもなく、おじさんが車の修理費と治療費を払うということで話がついた。アタシは軽いムチウチの首を回しながら父と共に帰宅した。
さてアタシは遅れて帰ってきた母を猛烈に攻め立てた。
「何考えてるんだよ!」
たとえば救急車が来た時、アタシも一緒に乗っていってしまったらどうなっただろう。
追突したおじさんが善意を良心を兼ね備えたひとだなんて誰が言える?証拠も目撃者もない、逃げるかもしれないし自分に有利な証言をするかもしれない。
重大な事故で怪我もひどかったら治療が先なのは当たり前だが、そうでない軽微な事故だとあとになって犯人を捜すにも一苦労だろう。
普通に運転してて追突されたのに「前の車が急ブレーキを踏んだので」とか言われても困る。そう思ったからこそアタシは不安な気持ちで見知らぬおじさんと現場にとどまり続けたのだ。
この場合幸いにも悪いおじさんではなかったが、もし悪いおじさんだったらうちが悪いことにされてぶつけられ損だったかもしれない。往々にしてこんなことはある。
事故、事件、まるで突然降って沸く不幸もあるにはあるが、そのうちの多くは自分自身のセキュリティ意識で防ぐことができる。
泥棒も痴漢もしかり。ミニスカートをはくことが痴漢を刺激するとしたら、それは1%くらいは女性にも責任がある。
寂しい夜道を歩いて暴漢にあったらやっぱりセキュリティ感覚に問われるのだ。
犯罪を犯すほうが悪いのは当たり前だ。だが残念なことにそれはなくならない。だったら自分で自分の身を守る最低限のことをしなければならない。
別に戦えとかスタンガン持ち歩けとかいうわけじゃない。ただ用心の度合いを今より少し引き上げればいいだけだ。
人を見たら泥棒と思え。用途が間違ってる気もするがアタシの座右の銘である。
・・・イヤな座右の銘だな、ホント。