TOP絵は使い回しのカット的落書きで、本文は過去ログから手を入れずそのまま移植。
だいぶ昔に書いたものなのでいろいろヒドイですが薄目でお読みくだされば幸いです。
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仕事や制服ではなく帽子をかぶりこなしている人間はほぼ無条件でオシャレに見えるのは、アタシだけだろうか。
高校時代のある日、アタシは何か辛いことがあったらしく体育館の隅っこでこっそり肩を震わせて泣いていた。
そんなアタシを目ざとく見つけたOBの先輩が、後ろから静かに近づいてきて自分のかぶっていた「Daytona」の帽子をかぶせて、黙って頭を2回ぽんぽんと叩いた。
涙の理由なんてすっ飛んでしまった。そんなさりげなくキザっちくカッコイイ真似ができる先輩にめちゃくちゃ感動してしまったのだ。
振り向くともうそこに先輩の姿はなかった。
結局そのままその帽子はアタシの所有物となった。
あとで聞いたことだがその帽子は先輩の一番のお気に入りの品だったそうで、確かによくかぶっていた。すごく似合っていた。
アタシは数日間有頂天でその帽子をかぶってうろついていたが、ある日兄の心ない一言によってお蔵入りすることになった。
「オマエって帽子ホントに似合わねえな。」
数年間忘れていたが、成人した頃にふと兄がかぶっていた帽子を見て唖然。
神々しい「Daytona」の文字が…
その後アタシが何度か寝言で「帽子、帽子…」と呟いていたことを兄は知らない。
ともあれ兄の簡易物欲のおかげで帽子がかぶりたくてもかぶれなくなってしまったアタシの家には、帽子としての役目を果たさない連中が悲しげに埃をかぶっている。