イチローがついに引退。
彼の打席に立つ姿は実に美しかった。
もうあの姿が見られないのは寂しいが、日米通算28年というあまりに長い時間を野球に捧げてきた。
素直にお疲れ様と言いたい。
記録の面では言うまでもないが、打席でのルーティンをはじめ、独特の「様式美」みたいなものを持っている選手だった。
正直抜群に体に恵まれているでもなく、抜きんでた才能というよりは、本人も引退会見で言っていたが「積み重ね」ることで自分の描く理想のかたちに限界まで近づけることを実現してきた「努力の天才」型だったと言えるだろう。
引退試合はテレビで見ていた。
試合途中でイチロー引退のニュースが流れ、8回の最終打席後、いったん守備位置につくかのように外野へ走って行ったイチローだったがここで途中交代。
そこからベンチへ帰るまでの間は、試合途中にもかかわらず感動的な引退セレモニーだったと言える。
球場中からの惜しみない万雷の拍手と、ベンチで待ち受けるチームメイト及びスタッフたち。イチローはそのひとりひとりとハグを交わして、ベンチの奥へと消えて行った。
もう開幕している公式戦の試合途中にそういった中断時間を設けることはちょっと異例に思えたが、それだけイチローは日本人からだけでなく、MLBの仲間たちからもリスペクトを受けているということなのだろう。
今後の彼がどうなるのかも当然注目が集まるが、当人は会見で「監督は絶対無理」と答えていた。
自分に厳しいがゆえ他人にも厳しい彼はなるほど監督は向いていないかもしれない。
想像を絶するレベルで節制と制御を繰り返して積み重ねたからこそ今の彼があるのであって、それを他人に一律に求めるとなると人はついていけなくなる。
だけど、指導者には向いているんじゃないかと個人的には思う。
彼の今後も楽しみだ。またテレビでも彼の姿を見る機会があるといいな。
とにかく今は、長い長い時間背負ってきた重圧から解放されて、自分と向き合って積み重ねつづけたいろんなものから少しでも離れて肩の力を抜いて、背負わない時間を満喫してほしい。
ああいう性分の人だから、積み重ねることはこの先もやめられないんだろうけど。
孤独で真面目でどこまでもストイックな努力の天才、イチロー。
本当に尊敬しています。
おつかれさまでした。