ランチタイムも落ち着いてきたころ、50~60代くらいの女性二人がご来店。
楽しげに食事を召しあがった終わりころになにやら電話をかけていた。
「ハイ、ハイ、じゃあこれからふたり行きますのでよろしくお願いします」
電話を切るとあわただしく会計を済ませてお帰りになった。
テーブルを片付けに行くと、食器の乗ったトレーの上に何やら会員証のようなモノが。
比較的近所の小ぶりな健康センターというか公衆温泉設備みたいな施設の会員カードだった。
ああ、ここに電話して予約入れてたんだな。で、忘れちゃったんだな。
すぐに追いかけたがすでに女性たちの姿はなかった。急いでたからなー。
ま、しょうがないか。
メンバーズカードとは言っても紙製の手作り感満載のモノだし、行った先で再発行でもなんでもしてくれるだろ。
とMGRに話しながらそのカードを開くと、地道に集めたであろうスタンプがびっしり。
残りスタンプ2つで、そのカードはいっぱいになるところまで来ていた。
まさに今日、2人で行っていっぱいになる予定だったんだろうな。
それを見たMGRが
「これは届けてあげたいですよね!」
と意外なほどの同情を示した。
「でも、こういうものをわざわざ届けるのもなんか…」
「気持ち悪いよね」
それでもMGRは
「本音を言えば届けてあげたいですねー、がんばって貯めたんだろうなー、やっといっぱいになったんだろうに」
と言い続けている。
わたしはといえば、正直そこまでお客さんの気持ちに寄り添えていなかった。
心底から気の毒がって同情してなんとかしてあげたいと思っているMGRの人の好さに、心を動かされた。
「じゃあ、仕事終わったらわたしが届けるよ。お店として届けるとなるとちょっと変だけど、いちスタッフとしてたまたま見つけて近かったから届けに来た、くらいならそんなにおかしくもないでしょ」
MGRはとても嬉しそうに見送ってくれた。
「マジすか!よろしくお願いします!」
ちょいと足を伸ばして目的地へ。
当人には会う必要もなかったので会わずにそそくさと引き揚げてきたが、推測通り来店はしていたようで、無事に受付に託すことができた。
これで念願のポイントがたまって喜んでくれているだろうか。
わたしは他人の気持ちを推測するのは苦手じゃないが、寄り添うのはそんなに得意じゃない。
べつに悪人ではないが、純白の善人でもないから、他人の不幸に同情するようなこともない。
皮肉や毒もぜんぜんなく、まっすぐにまっさらに同情を示せるMGRに尊敬と愛情を感じたお話でした。
心根のキレイさって、こういう時に見えるもんなんだな。
まぶしかったぜ。
MGRの人の好さをうかがわせるお話