読書メモ(リアル鬼ごっこ/何者)~最近の若者は!

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毎度おなじみ読書メモ、ネタバレ含むかもなのでご注意を。

 

ついつい既読作家の作品にばかり手が伸びがちだが、知らない作品にもどんどん挑んで行かないと時代に取り残されちゃうからね。

というわけで若手(?)作家の流行った作品をセレクト。いずれも初読の作家さん。

 

 

「リアル鬼ごっこ」山田悠介著

リアル鬼ごっこ (幻冬舎文庫)

 

筆が悪い。序盤の展開もものすごい無理やり。読み進めるのキツイかなーって思えるレベル。

だったのだけど、設定は面白く先がどうなるのか気にはなるので、思ったよりはスラスラ読めた。

 

途中ハラハラするシーンも多いのだけど、筆が追いついていない印象で迫る怖さがない。展開が理解できずさかのぼることも数度あった。

映像化したら面白いんだろうな、っていうかむしろ映像化前提で書かれてる?っていうか、もっと言うと「あんまり筆が達者じゃない人が映像を見て書き起こした」感じ。

 

 

ラストはだいたい想像通りだったけど、いろいろ粗も物足りなさも目立った。

 

 

ただ、あとがきで解説を読んでビックリ、そしておおいに納得。

この作者、これを執筆した当初までほとんど本を読んだことがないそうな。

そして自費出版から売れたのが本作だったそうな。

 

なるほどなるほど、確かにこれだけ筆が良くないと出版社も買うに買えないよな。

でも設定としては捨てるに惜しすぎる面白さだし、そういう道のりで売れたのがものすごい納得できた。

 

小説は書けば書くほどうまくなる、と個人的には思っている。

山田氏はこれがデビュー作のようなので、その後の作品は機会があれば読んでみたいかな。

 

 

 

 

「何者」朝井リョウ

 

何者(新潮文庫)

 

これはねー。なんつーか、「やられた!」って思った本。

 

「桐島、部活やめるってよ」で一躍有名になった人、って程度の認識だったから、正直これを手に取った時も結構逡巡したんだよ。

就活の話らしいし、さわやかな青春ものってのもどうもなあ。

とはいえ食わず嫌いはアカン。とりあえず世間で流行ったものにはチャレンジしてみねば。

 

 

いやいやなかなかどうして、青春ものと言やあそうなんだけど。

殺人があるわけでもなし、どでかい盛り上がりのシーンがあるわけでもないんだけど。

見事なまでにサスペンス仕立て。とまんなかった。

 

 

筆も達者で読みやすいが、特筆すべきは人物描写力。

よく「リアリティのある」なんて表現を使うけど、この人の描く「ヒト」はリアリティなんて言葉じゃなまぬるい。

もうね、いるよ。絶対どっかに存在してるだろ。

架空の人物に架空の設定のはずなのにここまで生々しい描写ができるのは天晴。

そう、「生々しい」んだよ。あまりにも。

 

 

ネット世代の感覚を巧みに取り入れ、それでいて今時の若者はってのを微塵も感じさせない。

いやむしろ今時の若者だからこそ書けるんだなこんなの。悔しいけど素晴らしい。

 

この「悔しい」ってのは、なんつーかうまく言えないんだけど。

舞台で一本、設定で一本、みたいな小説と違って、舞台も、話の展開も、正直どこにでもありすぎるありふれたモノ。

それなのにこんなに面白い!ことがなんかこう悔しいんだよね。してやられた感じ。

 

 

人の心をぐぐっとえぐる描写も多く、印象的な名作でした。

この著者の作品は今後正直、すっごい読みたくないけどすっごい読みたい。

この矛盾した感情がまんま「何者」を読んだ感想です。

 

まーったく、最近の若者は!

…すげえよ!

 

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